寒くなると、肩がこる。腰が重い。
「冷えるから血行が悪くなる」とよく言われます。それもあると思いますが、もっと分かりやすい変化が先に起きています。
寒いと、人は体を小さくします。
肩を上げ、首をすくめ、背中を丸め、腕を体に寄せる。無意識にやっています。
ピラティスの指導を25年してきて、毎年この時期に同じことが起きるのを見ています。
※ この記事は一般的な情報です。痛みやしびれがある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
1. 冬に起きている姿勢の変化
寒さを感じたときの体の反応を、分解するとこうなります。
| 起きること | その結果 |
|---|---|
| 肩が上がる | 首から肩の筋肉が、ずっと働き続けます |
| あごが前に出る | 頭の重さを、首で支える形になります |
| 背中が丸まる | 胸が閉じて、呼吸が浅くなります |
| 腕を体に寄せる | 肩甲骨が動かなくなります |
| 動く量が減る | 同じ姿勢の時間が長くなります |
一つひとつは小さいことです。
ただ、これが1日中、何か月も続きます。
「こる」の前に「動いていない」
25年見てきて思うのは、冬に不調を訴える方の多くが、「硬くなった」というより「動かしていない」状態にあるということです。
肩を上げたまま固定していれば、当然つらくなります。
だから、ほぐすことより先にできることがあります。
2. まず、縮まない環境をつくる
ここが、いちばん効きます。そして、いちばん省略されます。
寒いから縮むのであれば、寒くなければ縮みません。
ストレッチを10分やるより、その場所を1℃上げるほうが、結果が出ることがあります。
足元を見る
冷気は下にたまります。暖房をつけていても、足元だけ冷えていることがよくあります。
足が冷たいと、体は全体を縮めにいきます。肩の力みが、足元から来ていることがあります。
- 厚手の靴下、スリッパ
- 足元に敷くもの(フローリングは冷えます)
- デスクの下の冷気を止める
肩まわりを直接あたためる
上半身が寒いと、肩は上がったままになります。
肩にかけられるものを、座る場所に置いておいてください。取りに行かないと使いません。
部屋の中の温度差を減らす
暖かい部屋から寒い廊下へ、という移動のたびに、体は縮みます。
とくに脱衣所とトイレは、差が大きくなりがちです。
⚠️ これは姿勢だけの話ではありません。急激な温度差は、血圧の急な変動(ヒートショック)につながることがあり、冬場の入浴中の事故として毎年注意喚起が出ています。高齢の方、血圧に不安のある方は特に注意してください。
3. 呼吸が浅くなっている
背中が丸まり、胸が閉じると、呼吸は浅くなります。
そして浅い呼吸が続くと、首や肩の筋肉まで呼吸に動員されます。本来そこまで使わなくていい場所が、ずっと働くことになります。
「深く吸う」ではなく「吐ききる」
呼吸を意識してくださいと言うと、たいていの方が大きく吸おうとします。
でも、吸う量を増やすには、先に吐く必要があります。入っている状態では、それ以上入りません。
やることは1つです。
ゆっくり、最後まで吐く。吸うのは、体に任せる。
これだけで肩の位置が下がることがあります。数回で構いません。
⚠️ めまいがしたら、すぐにやめて普通の呼吸に戻してください。回数を増やす必要はありません。
4. 座ったままできる、戻し方
難しい動きは要りません。縮んだ方向と反対に、少し動かすだけです。
⚠️ 全部に共通する約束です。
- 反動をつけない
- 痛みが出たら、そこでやめる
- 「気持ちいい」の範囲を超えない
- 体が冷えきっているときは、あたたまってから
① 肩を上げて、落とす
肩をすくめるように、思いきり上げます。そのまま数秒。
そして、力を抜いて落とします。
下げようとしなくて構いません。上げた状態から手を離すだけです。
「下げる」は難しいのに「上げてやめる」は誰でもできます。すでに上がっている肩を下ろすには、こちらのほうが確実です。
② 胸を開く
背中を反らせるのではありません。鎖骨のあたりを、左右に広げるイメージです。
座ったまま、胸の前で組んでいる腕をほどいて、手のひらを前に向ける。それだけでも変わります。
⚠️ 腰を反らせないでください。反らせると、腰に負担がかかります。動かすのは胸のあたりだけです。
③ 首を、ゆっくり回さない
これは「やらないこと」です。
首をぐるぐる回す動きは、よく見かけますが、すすめていません。
代わりに、まっすぐ横を向く。ゆっくり戻す。反対も同じ。これで十分です。
⚠️ 首は、いちばん慎重に扱う場所です。痛み、しびれ、めまいが出たら、すぐにやめて医療機関に相談してください。
④ 立ち上がる
結局、これがいちばん効きます。
同じ姿勢を続けないこと。30分から1時間に1回、立ち上がる。それだけで、固定されていた姿勢がいったん解けます。
ストレッチを覚えるより、立つ回数を増やすほうが簡単で、続きます。
5. ⚠️ やらないほうがいいこと
冷えたまま、急に大きく動かす
朝起きてすぐ、外から帰ってすぐ。体が冷えている状態で勢いよく動かすのは避けてください。
先に、あたためる。動かすのはそのあとです。
痛いところを、伸ばしにいく
痛みがある場所を、無理に伸ばしたり押したりしないでください。
痛みは、そこを動かすなという合図であることがあります。
「痛いほど効く」と考える
そういうことはありません。
強くやるほど良いという考え方で、かえって状態が悪くなる方を見てきました。強さより、回数と頻度です。
6. ⚠️ 受診を考える目安
次のような場合は、姿勢や冷えのせいだと決めつけないでください。
- しびれがある
- 力が入りにくい
- 安静にしていても痛い
- 夜、痛みで目が覚める
- 腕や脚に広がる痛みがある
- 頭痛やめまいをともなう
- けがのあとから続いている
- いつもと違う感じがする
整形外科などの医療機関を受診してください。
私は運動指導をしている立場で、診断も治療もできません。そこは、はっきり分けています。
まとめ
- 寒いと肩が上がり、あごが出て、背中が丸まる
- 問題は硬さより、その姿勢のまま固定されていること
- ほぐす前に、縮まない環境をつくる(ここがいちばん効きます)
- 足元の冷えを止める。肩の力みが足元から来ていることがあります
- ⚠️ 脱衣所とトイレの温度差には、血圧の面からも注意
- 呼吸は「深く吸う」ではなく「吐ききる」
- 動きは肩を上げて落とす/胸を開く/横を向くで十分
- ⚠️ 首はぐるぐる回さない
- いちばん効くのは、立ち上がる回数を増やすこと
- ⚠️ 冷えたまま急に動かさない。痛いところを伸ばさない
- ⚠️ しびれ・安静時の痛み・夜間の痛みがあれば受診
寒くなったら、まず足元に何か敷いてください。ストレッチより先です。
※ この記事は一般的な情報であり、特定の症状に対する診断や治療を目的としたものではありません。効果の感じ方には個人差があります。痛みやしびれがある場合、持病がある場合、妊娠中の場合は、自己判断せず医師にご相談ください。
よくある質問
Q. どれくらいやれば変わりますか?
感じ方には個人差があり、一律には言えません。ただ、1日に長時間やるより、短くても回数を分けるほうが、続きますし負担も少ないです。「1日1回30分」より「1時間に1回立ち上がる」を先にしてください。
Q. お風呂であたためるのは効果がありますか?
体があたたまった状態は、動かしやすくなります。ただし熱すぎる湯は、体への負担になることがあります。また、入浴前後の温度差には注意が必要です。のぼせや立ちくらみに気をつけてください。
Q. マッサージや整体に行くべきですか?
選ぶのは自由ですが、痛みやしびれがあるなら、先に医療機関で診てもらってください。原因が分からないまま施術を受けると、対応が遅れることがあります。順番として、医療機関が先です。
Q. 運動が苦手でも大丈夫ですか?
この記事に書いたのは、運動と呼べるほどのものではありません。肩を上げて落とす、横を向く、立ち上がる。それだけです。運動が得意かどうかは関係ありません。
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