庭のカナヘビを数週間だけ飼って、返した話|連れて帰る前に考えてほしいこと

庭で出会ったカナヘビ 飼育の基本

庭で水やりをしていたら、足元をさっと細長い影が走り抜けました。

目を落とすと、小さなカナヘビがじっとこちらを見ていました。爬虫類を20年以上飼ってきた私でも、野生のカナヘビをこんなに近くで見たのは久しぶりで、しばらく動けませんでした。

数週間、一緒に過ごして、庭へ返しました。その記録と、いま振り返って「先に考えるべきだった」と思うことを書きます。

⚠ 先に:連れて帰る前に考えてほしい3つ

読んで真似してほしい記事ではないので、ここを最初に書きます。

1. 国の基準は、野生動物の飼育に慎重を求めています

環境省の家庭動物等の飼養及び保管に関する基準の第1に、こう書かれています。

家畜化されていない野生動物等については、本来その飼養及び保管のためには当該野生動物等の生態、習性及び生理に即した特別の飼養及び保管のための諸条件を整備し、及び維持する必要があること、譲渡しが難しく飼養の中止が容易でないこと

同じ基準の第2で、対象となる「動物」には爬虫類が含まれています。

2. 飼っている個体がいるなら、絶対に分けること

これが私の一番の反省点です。

うちには20年飼ってきた爬虫類がいます。そこへ野生の個体を持ち込みました。病気や寄生虫は、野生から飼育個体へも、飼育個体から野生へも移る可能性があります。

当時はそこまで考えていませんでした。いま同じ状況になるなら、

  • 別の部屋に置く
  • 世話の道具を完全に分ける
  • 触った後は必ず手を洗ってから、他のケージに近づく

この3つは最低限やります。返すときも同じです。家の中で何かをもらった個体を、元の場所に戻すことになります。

3. 返すなら、見つけた場所に返すこと

別の場所に放すのは、本人にとっても、その土地にとっても良くありません。うちは庭で見つけて、庭に返しました。

そもそも連れて帰らない、という選択がいちばん確実です。そのうえで、以下は実際に起きたことの記録として読んでください。

出会った日

砂利の上にいるカナヘビ

その日は肌寒くて、カナヘビはあまり動きませんでした。手を差し伸べても逃げず、じっとしている。そっと掌に乗せても、暴れずにこちらを見てくる。

野生でずっと生き抜いてきた生き物が、手の上でじっとしている。それだけのことなのに、妙に印象に残りました。

「しばらく観察してみようか」という気持ちになるのに、時間はかかりませんでした。いま思えば、ここで一度止まるべきでした。

急ごしらえの環境

屋外の石の上にいるカナヘビ

何も準備していなかったので、手持ちのプラケースで組みました。

  • 庭から枝と石を拾う
  • 流水で洗って、熱湯をかけて、天日干し
  • 湿らせたティッシュを敷く
  • 隠れられる場所と、登れる場所を作る

拾ったものを使うときは、洗って熱湯をかけて乾かします。これは20年やってきた習慣がそのまま出ました。

「これで大丈夫かな」という不安を抱えながら観察していました。動かないのに、たまにこちらをチラッと見てくる。

2週間で、変わったこと

プラケースの中、枯れ葉を敷いた環境にいるカナヘビ
最初隠れている時間が長い
1週間後朝、ケースに近づくと出てくる。昼前になるとソワソワする
2週間後昼間もケース内を歩き回る。前に立っても逃げず、こちらを見てくる

拾ってきた枝の上でじっとしている時間が増えて、「お気に入りの場所ができたんだな」と思いました。背中の色も、迎えた頃より少し鮮やかになった気がしました。気のせいかもしれません。

毎朝ケースを覗くのが習慣になりました。「今日はどこにいるか」「昨日と違う場所で寝ているか」。小さなことなのに、毎日少し違うので飽きませんでした。

返すと決めた日

最初から「しばらく観察して自然に返そう」と決めていました。でも毎日見ているうちに、その気持ちが揺らぎました。

「このまま一緒にいてもいいんじゃないか」と思う自分と、「野生で生きてきた生き物を家に置いていいのか」と思う自分が、交互に出てきます。

他の爬虫類を長く飼ってきたので、「環境を整えれば育てられる」という自信はありました。そこが、かえって厄介でした。できるかどうかと、していいかどうかは別の話です。

2週間ほど悩んで、返すことにしました。決め手は、天気の良い日に、カナヘビが窓の外をじっと見ていたことです。

何を見ていたのかは分かりません。でもその姿を見たとき、「外のほうがいいんじゃないか」と思いました。

返した日

庭でケースを開けると、カナヘビはしばらく動きませんでした。外の空気を感じているのか、出るタイミングをはかっているのか。

1分くらいじっとして、それからゆっくり端まで歩いて、草のほうへ消えていきました。振り返りませんでした。

逃げていったわけでもなく、ただ自然に草の中へ入っていった。

「良かったのかな」という気持ちと「良かった」という気持ちが、同時にありました。寂しいけれど、あの動きはケースの中で歩くときとは明らかに違いました。

数週間で分かったこと

小さくて、素早くて、野生で生きている生き物を観察するのは、飼育を始めた頃の感覚に似ていました。

「この生き物は何を考えているんだろう」と思いながら毎日ケースを覗いていた時間は、20年前にレオパを初めて迎えた頃と重なります。その頃の話は5,400円で始めた記事に書きました。

短い期間でも、観察していれば発見があります。隠れてばかりだったのが歩き回るようになって、お気に入りの場所ができて、色が変わっていく。

ただ、その発見は連れて帰らなくても得られたかもしれません。庭で毎日観察するという方法もありました。いま書いていて、そう思います。

また庭で見かけたとき、あのカナヘビかどうかは分かりません。それでも、ちょっと立ち止まって見てしまうと思います。